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2006年3月22日 (水)

物理屋と数学屋は対立してると思われてるんでしょうか

まんがタウンオリジナルという4コマ誌に、松本蜜柑という人が描いている「微分♡積分♡いい気分♡」というマンガがある。
今回は、数学屋と物理屋は仲が悪いというネタだった。
花見の席で、ヒロインの数学教師に同僚の物理教師が嫌みなことをいって、口論になるという展開だ。

物理を学んだ自分としては、実際には数学屋がやっていることは現実を超越していると思う。物理屋が扱うのが3次元、4次元(3次元+時間)ならば、数学屋が扱うのはn次元なのである。SFで48次元だ、オカルトで72次元だといっても、数学屋から見れば、nの値が3やら4やら48やら72であるだけのことだろう。もちろん、nが100万だろうと1兆だろうと関係ない。nは自然数ならばどんな数でも扱えるからだ。少なくとも、物理屋は数学屋をそのように見ているだろう。
そのためか、数学を自然科学扱いしないという風潮もある。なにしろ、自然界には存在しえないような状況でこれはどうなるかということを考える学問なのだ。そんなのを見たら、数学屋は一線を越えてしまった人たちであると思っても仕方がないだろう。そんな人と対立してどうなるのか。
実際、学生の頃のゼミの指導教官(専攻は素粒子物理学)の奥さんは、高校の数学の先生だそうだ。しかも、夫婦仲はよいらしい。その奥さんにとって、旦那である大学の物理の先生が扱っている数学は難しいものだそうだ。

ヒロインの「数学と物理の人間の間には暗くて深い河があるんです」というセリフがあるが、その河とはこの一線ではなかろうか。

物理を学んだ自分から見て対立してると思われるのは、物理屋vs.数学屋よりも、理論物理屋vs.実験物理屋かもしれない。ただ、これは物理屋の中でのジョークネタとして扱われる方が多いかもしれない。現代物理学は、理論を検証するのに必要な装置は非常に精密だったり、あまりにも大規模すぎるので、やはり実験には実験の専門家が必要であり、また、既存の理論で扱われる数式が非常に高度な微分方程式やらやたらと複雑な積分計算だったりするので、理論にも専門家が必要となる。現代物理学があまりにも進歩したために、1人の物理学者が理論と実験を行おうにも、それは非常に困難なことになっているのが現状なのだ。

もっと現実的な対立は、理学系と工学系の対立かもしれない。なにしろ、同じものを示しているはずなのに、言葉が違うのだ。有名なのは"electric magnetic field"の訳語は、理学系では「電磁場」だが工学系は「電磁界」なのは有名だ。
さらに、ある現象があれば、理学系ならば、その現象の根底にあるのは何かを追求するだろうが、工学系ならば、それで何が出来るかを追求するだろう。
つまりは、理学の目的が自然のあり方の追求であるのに対して、工学の目的は自然の利用の追求であり、自然のあり方自体にはほとんど興味を見せないようだ。
実際、航空工学の教科書を読んだことがあるが、数式の大部分は、ほぼ天下り的に登場している。それに対して、一般的な物理学の教科書ならば、きちんと式の導出まで描かれている。

まあ、このマンガの物理教師、数学を「応用科学のツールにすぎない」と言っていることから見ると、工学系のような気もするのだが…(偏見か?)

ところで、このマンガの最初で、「リーマン」なる言葉が出てくるけど、物理屋や数学屋にとっては、サラリーマンの略ではなく、一般相対性理論に使われる幾何学のことだと思うだろうけど、作者はわかっててやったのかな?
数学と計算機科学の違いも分かっていないような気もするのだが。

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